歯のきわが沁みるというお悩みは少なくありません。しかし、歯がしみる原因をすぐに虫歯と決めつけるのは早計です。むしろ、虫歯以外の原因であることのほうが多いのです。
かつては歯ブラシのしすぎが原因とされていました。しかし、近年の研究では別の理由が解明されつつあります。
歯の構造とストレスの関係
歯の表面は硬いエナメル質という組織で覆われています。しかし、歯冠部に側方の力が加わることで、歯頸部に引っ張りや圧縮応力が生じます。
例えば、歯並びが悪い場合や粗悪なかぶせ物がある場合、長期間にわたって一定以上の側方の力が加わります。その結果、エナメル質内部の結合が破壊される現象が起こります。
マイクロクラックとその影響
この現象は、俗に”マイクロクラック”と呼ばれるエナメル質表面の微小な亀裂です。この目に見えない亀裂が発生すると、歯ブラシの横磨きなどが加わり、長期的にはエナメル質が削れる原因となります。

歯のきわに限らず、目に見えない亀裂が次第に大きく
また、歯のきわに限らず、起きているときは意識的に歯への力をコントロールできます。しかし、寝ているときの無意識下では「かみ締め」や「歯軋り」、いわゆる「ブラキシズム」によって、コントロールがほとんど不可能です。
このような無意識下の現象が原因で、楔状欠損がどんどん進行する場合があります。

咬合応力によりはがれてきたエナメル小柱
上の図は、マイクロクラックが起きようとしている様子を表したものです。通常、対症療法としては、削れてしまった歯質をコンポジットレジンという樹脂修復材で詰める方法が取られます。
さらに、実質欠損に至らない場合でも、知覚過敏を緩和するための治療が行われます。具体的には、歯質にしみ止め成分を含む薬液を塗布したり、薄い液状樹脂でコーティングを施す方法があります。
また、薄いプラスチック製のスプリントを上顎または下顎に装着し、夜間のかみ締めや歯ぎしりの力を分散させる治療も一般的です。
根本療法のアプローチ
対症療法ではなく根本的に治療するためには、まず歯型を取って顎の動きを詳しく調べる精密検査(自費治療)を受けます。その後、噛み合わせのひずみが問題となっていないかを確認します。
場合によっては、矯正治療やかぶせ物の作り直しが必要になることもあります。さらに、特定の歯に負担が集中しないよう、歯を削って形態を調整することで、口腔内環境を整える治療が行われます。
また、当院では歯科情報を様々に発信していますのでぜひご覧ください。

左上の写真は前歯犬歯のガイド面が不調和であちこちの歯がマイクロクラックによる歯のエナメル質表面がしみると言う主訴で来院された方です。(歯のきわに限らず、両側の歯頚部にご注目ください)

咬合精密検査後に奥歯のかみ合わせの面がしっかりとかんでいない部分と横と前方に顎を動かした時の前歯のガイド面が不足していたのでこの方の顎の動きに合わせたかぶせ物(オールセラミッククラウン)により修復した例です。

治療前:上の拡大部分
上顎の切歯、側切歯、犬歯、第1、第2小臼歯の形態に注目

治療後
上顎の各歯牙の動きに調和した形態がしっかりと作られ、かぶせ直した。これら適切なガイダンス(被蓋)があることで顎の動きやブラキシズムシズムなどの力が特定の歯牙に対してかかりにくくなり、全体が守られ長期的に安定した環境が整います。

歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。