アレルギー疾患が異常なほど増えています。このアレルギー疾患のうち、43%(東京医科歯科大学アレルギー外来調べ)が歯科のつめもの、かぶせものなどの材料である金属材料にあることが判明して、大きな話題となっています。

現在、歯科で使われている金属修復物には約20種類の金属が使用されています。その多くは生体にとって為害性はないとされてきましたが、近年の科学技術の進歩に伴い、各種の金属元素は口腔内で腐食、溶出して抗原となり、金属アレルギーをひき起こすことが報告されるようになりました。

金属アレルギーの一般的な症状

金属アレルギーの一般的な症状は、湿疹、じんましん、紅斑、水泡、皮膚炎、歯肉口内炎、掌蹠膿疱症、扁平苔蘚、腫脹など様々です。

掌蹠膿疱症

手、足、以外にも頭部、肘、膝にも乾癬と似た皮膚の症状を呈するときがあります。この方の場合には、金属アレルギーのパッチテストでSn(スズ)にアレルギー反応があることがわかりました
(出展“歯科とアレルギー” 井上昌幸、中山秀夫著)

扁平苔癬

47歳女性、舌、頬粘膜にも白色のレース状の粘膜疹を認める。金属アレルギーのパッチテストでPd(パラジウム)のみにアレルギーがあった(出展“歯科とアレルギー”井上昌幸、中山秀生)

アレルギー症状は非常に微量のアレルゲンでも疾患が誘発されるため、金属修復物の腐食がたとえ微量であったとしても、炎症が発生することがあります。

また、花粉症などでご存知のかたもいらっしゃると思いますが、いままでなんでもなかった人でも、ある一定レヴェルまで体内にアレルゲンが蓄積されてきてから突然症状が現れることがよくありますので、安心してはおられません。

金属アレルギーが出た場合

不幸にも金族アレルギーの症状が出た場合には、原因となっている金属修復物を撤去する以外に方法はありません。また、将来にわたって金属アレルギーになるリスクを減らしたいとお考えの方に関しても、腐食しやすい金属の詰め物、かぶせものはおすすめできないことになります。

よく女性の方でピアスや安物の金属のネックレスなどが汗といっしょになったりしたときにその部分がかぶれたように赤くなったりするので皮膚につけている部分は一番心配ですと認識されている方がいらっしゃいます。

唾液を介して直接からだの中に24時間いっしょにくっついている金属のほうが実はもっとたちが悪いといえます。健康保険で採用され厚生労働省が認めているから歯科用に使われている金属、特に金銀パラジウム金属は安全なのでしょうか。

この金銀パラジウム合金はすでに現在ドイツでは使用禁止となっています。日本では国民皆保険をうたっていますが、それに使われている材料は、まだまだ考える必要があるものばかりです。

かつて盛んに健康保険治療で使われていたアマルガム

1800年代後半から1900年代に盛んに使われていた歯の充填物アマルガム、かつては銀歯の代名詞ともいわれた歯科材料でした。

私の毎日の臨床のなかで、このアマルガムがまだ30代後半くらいの方たちのお口の中にかなり残っているのにはとても驚かされます。

アマルガム充填物の組成は水銀50{238e0506cd01b883f1117c2a68c49fbb61124ee7ba5e8c07f0555ab3d9f6b91b}、銀35{238e0506cd01b883f1117c2a68c49fbb61124ee7ba5e8c07f0555ab3d9f6b91b}、スズ9{238e0506cd01b883f1117c2a68c49fbb61124ee7ba5e8c07f0555ab3d9f6b91b}、銅6{238e0506cd01b883f1117c2a68c49fbb61124ee7ba5e8c07f0555ab3d9f6b91b}、それに少量の亜鉛です。

鋳造してはめ込んだ銀歯と違いアマルガムの場合にはその場で合金状態の柔らかいうちにこするようにして詰めて修復された、痛くなくても結構な数のアマルガムが口の中に入っている方はまだまだ結構な数いるのが毎日の臨床で確認されます

基本的に合金状態では当時無害とされていたのですが、どう考えても水銀が体にいいとは思えませんよね。

2002年に米国ではアマルガムの中の水銀成分のせいで神経毒性を根拠に自閉症になったという訴訟がおきています。

当時の報告ではアマルガム充填者の血中には通常の6倍もの水銀が検出されたというから驚きです。その後米国では当然アマルガムは歯科材料からは撤廃となって現在では日本での使用も当然行われていません。

金属アレルギーに対するポイント

口腔内は非常に激しい腐食環境であるために、生体に安全な耐食性の高い素材を使い、しかも異種金属の接触腐食をおこさないように配慮する必要があります。

また、ごく微量の金属元素の溶出でも免疫系を刺激し、各種アレルギー疾患を引き起こすことを考慮する必要があります。

金属イオンそれ自体では抗原にはならない不完全抗原であり、このような物質のことをハプテンと言います。

なぜ金属イオンが抗原となってしまうかと言いますと、実は金属イオンにはもともとタンパクと結合しやすいという性質があります。

金属イオンがこのようなタンパク(キャリアー)と結合して、ハプテンキャリアー結合体となると、抗原としての性質を獲得してしまいます。

金属アレルギーは感作Tリンパ球がこのハプテンキャリアー結合体を異物として認識して排除しようとする細胞性免疫応答のひとつなのです。

口腔内環境が悪いと腐食も進みやすい

かぶせものについての項目のところでもお伝えしましたが、歯ブラシがうまくできていなくてプラークが多い口腔内環境の悪い方の場合には、高率に2次齲蝕が起こるために、腐食も進みやすいのです。

腐食した金属もアレルゲンの元になるのですから、そもそも金属を使わないにこしたことはありません。

予防的観点から、生体安全性、耐腐食性が高く、アレルゲンとならない金属材料と
して、セラミックス系、ジルコニア系の材料にも大きな期待が寄せられています。

(残念ながら、健康保険ではセラミック、ジルコニアは採用されておりません)

参考文献

  • 「生体用金属材料の腐食」:Bosyoku Gijyutsu 38 東京医科歯科大学医用機材研究所「金属アレルギーと口腔内使用金属について」
  • 病態生理Vol.9、No5 東京医科歯科大学歯学部第2補綴学教室 「口腔内における歯科用合金の腐食と生体に対する影響」
  • Zairyo-to-Kankyo 42 「歯科医のための免疫学第7回」歯科学報Vol.95「金属アレルギーと口腔内修復物の成分組成に関する調査」
  • 口腔病学会誌1998.65/1「金属アレルギー患者の歯科治療に関する原因除去療法の問題点」
  • 医薬の門Vol36.No2
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