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日本人の8割が抱える「沈黙の病」歯周病の実態

今日は、日本人の大人の約8割が知らず知らずのうちにかかっているという「歯周病」についてお話しします。その厄介な実態と、老後の人生を左右する解決戦略についてです。

歯周病は実に「タチの悪い」病気です。なぜなら、自分がすでに罹患していても、慢性的に進行している間は痛みなどの自覚症状がほとんどないからです。だから誰かに「歯周病ですよ」と指摘されたとしても、本人はその対策に本気になりにくいのです。

繰り返される「対症療法」の無限ループ

皆さんは歯科医院で「歯茎が腫れていますね、もっとよく磨いてくださいね」と言われ、その場しのぎの返事をしたことはありませんか?その後、忘れた頃にまた違和感が出たので受診し、そこでまた「歯周病ですよ、そこをよく磨いてくださいね」と言われる。これは一時的な対策に過ぎません。

このようなエピソードを繰り返しながら、年とともに着実に悪化していく無限ループのような状態。これは決して「戦略的」とは言えません。しかしながら、これはほとんどの方に常態化した光景であり、気づかないうちに地獄への階段を降りていくことになります。この「ゆっくりと進む実態」こそが、歯周病がタチの悪い病気だと言われる所以です。

口臭・出血は危険信号、しかし気づけない

口臭というのは典型的な歯周病の症状の一つと言われています。他人の口臭には気づけても、自分の口臭には気づけていない人が非常に多いのです。これは、鼻と口の感覚器官が慣れっこになっているため、自分では何とも思わなくなってしまうからです。

また、歯茎の腫れや出血があっても、その時だけ市販のおすすめの歯磨き粉などで少し頑張って磨けば、一時的には症状は収まります。この「イタチごっこ」が何年も続く間に年を取り、免疫力が下がり始めた中年以降になると、今度は突然「歯がグラグラする」という取り返しのつかない症状となって現れます。

この時になって「どうすれば良いのだろう」と真剣に考える人が多くなります。まさに歯周病は、そんな人の性格の弱さにつけ込んだタチの悪い病気なのです。

セルフケアの限界は「60点」

ここで一つ厳しい現実をお伝えしなければなりません。あなたが「よく汚れが取れる」といわれる歯ブラシや高性能の電動歯ブラシを使っていくら頑張ったとしても、あなたの口腔ケアのテストの最高点は「60点」止まりなのです。

プラークコントロールレコードの壁

どれだけ歯ブラシを極めても、歯と歯の間には毛先は届きません。歯科医院では磨き残しの割合を「プラークコントロールレコード」という指標で判断します。これは小学校の頃にやった、ピンク色の染め出し液を使って磨き残しをチェックするテストと同じようなものです。

世界の歯科医療のゴールドスタンダードでは、このプラークコントロールが20%以下にならない限り、どんなに優れた最新治療をしても歯周病は再発し、失敗に終わるとされています。

20%というのは非常に厳しい数字です。歯のすべての面を隅々までしっかりと磨くことができない人は、どんな優れた治療を受けても、慢性的に磨き残しがあるために必ず歯周病が再発してしまうのです。

「磨き方を教わりに来たんじゃない」という誤解

以前、ある50代の社長さんが「歯石を取ってほしい」と3年ぶりに来院されました。担当の歯科衛生士が、汚れた歯の場所をご説明しようとしたところ、その社長さんは半ば怒り気味にこう言われました。

「私は別に磨き方を教わりに来たんじゃないんだよ。歯石くらいさっさと取ってくれ」

この方は、自分で汚れに気づいた時だけ取りにくればいいと勝手に考えていたようです。しかし、毎日少しずつ溜まった汚れが、石のように硬い「歯石」になるまで放置されていた時点で、実はその歯石の下では静かに炎症が起きていました。

歯石の下で進行する破壊

歯周病の原因は、磨き残された古いプラーク(細菌の塊)です。これらは古くなると毒性が高まり、やがて歯石になります。取り残されて古くなったプラークの細菌たちは、我々に気づかれないように、痛みを起こすことなく、常にゆっくりと、しかし着実に歯を支える骨を溶かし始めます。

プロに委ねる「戦略的予防クリーニング」

では、私たち全員が年をとっても歯周病を進行させずに予防していくためには、具体的にどう行動すべきなのでしょうか。

答えはシンプルです。「自分のセルフケアの不足部分(残りの40%)を、プロの手に委ねる戦略」を取ればよいのです。細菌の膜であるバイオフィルムが毒性を高めるサイクルに合わせて、美容院やネイルサロンに行くような感覚で、専門的なレベルの高いクリーニングを定期的に受けるということです。

通院間隔を決める3つの要因

プロによるクリーニングの間隔は、以下の3つの要因で決まります。

  1. 現在の歯周病の進行度:すでに骨が溶けているなどのハンデがある場合は、間隔を短くする必要があります。
  2. 自身の磨き方のスキル:磨き残しが多い場合は、短いサイクルでのリセットが必要です。
  3. 年齢:35歳以上で免疫力が低下している場合、若い頃と同じケアでは間に合いません。

通常の健常者は3〜4ヶ月ごとが多いようですが、これらの指標を総合的に勘案して、次回の「戦略的な予防クリーニング」の時期を決めてもらうと良いでしょう。

ウルトラファインバブルと最新機器による洗浄

定期的な戦略的クリーニングでは、プラークコントロールレコードを「0%」にしてくれるレベルの処置を行います。例えば、以下のような工程です。

  • ウルトラファインバブル水:通常の水をナノレベルまで細かくしたもので、洗浄力が高く、除菌効果も期待できます。
  • 専用パウダーとジェット水流:こびりついたバイオフィルムや着色汚れを吹き飛ばします。
  • 超音波スケーラー:キャビテーション効果で汚れを浮かせ、除菌します。
  • プロによるフロスと研磨:最後は人の手で、歯と歯の間や表面をツルツルに磨き上げます。

これらすべての工程を、専門のトレーニングを受けた歯科衛生士が約50分かけて行ってくれます。

継続こそが力なり

ここで興味深いデータがあります。歯周病菌のDNA検査の結果を用いて、戦略的な予防クリーニングを継続していくと、口の中の悪玉菌(PG菌など)が有意に減少していくことが分かっています。さらに、回数を重ねるごとに口腔内細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性が安定し、悪玉菌が優位になりにくい環境が作られます。

たまに思い出した時に行くだけでは意味がありません。髪の毛が勝手に伸びるのと同じように、バイオフィルムも毎日形成されます。だからこそ、3ヶ月ごとという一定の間隔で継続的に通い続けることが重要なのです。

結論:地獄への階段を「上り」に変える

一番大きな誤解は、「若い時期と同じ磨き方でなんとかなる」と思っている点です。年を取って免疫が下がった分だけ、今までのケア習慣では通用しなくなります。

私の好きな、戦中戦後に活躍された安岡正篤先生という思想家の言葉に、こういった意味のものがあります。「予防できる方法を知っていても、それを実際に実行に移して、かつ継続しなければ全く意味がない」。

あなたも今日から、知らず知らずに進んでいる地獄への階段を、健康への「上り階段」へと変える、戦略的な口腔ケアを始めてみませんか。

動画内の参考文献

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Category歯周病
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