
出歯の症状と年齢による変化
出歯に関する症状は、40歳以降から訴える方が多くなります。歯列全体には緩やかなカーブがあり、このカーブの影響で、噛むたびに歯には手前に倒れ込む力が加わります。
この力はアンテリアコンポーネントフォースと呼ばれています。そのため、どなたでも年齢とともに歯が手前に倒れ込む現象が起こります。これは生理的な現象ですが、もし急速に進行した場合は注意が必要です。


出歯の原因となる複合的な要因
出歯の原因としては、以下のような複合的な要因が挙げられます。
- 骨格的にもともと上下顎の歯並びにおいて臼歯と前歯の連携が取れていなかった場合
- 調和のとれた歯の噛み合わせの面が機能的に作られていなかったり、前歯の角度がその人の顎の動きの角度に調和していなかった場合
- 上下の噛み合せの高さの不足や、低すぎる入れ歯や被せ物が奥歯に多数存在する場合
- 口腔周囲筋のアンバランスと突出舌癖(舌を歯の後ろ側に強く押し付ける癖)や、鼻の疾患に伴う慢性的な口呼吸
- それに加えて口腔清掃不良による慢性的な歯周病
このように、複合的な要因が絡むことで出歯の症状が表面化してきます。
高齢化に伴う出歯と歯の咬耗
特に高齢化に伴い、歯の咬耗が進むことで歯の表面がつるつるになったり、夜間の過度なブラキシズムやくいしばりで歯の片べりが起きる場合もあります。
この時、早い段階で前歯が出てきたことを実感し、それが来院のきっかけになることも多いです。放置すると、やがて前歯がぐらつき、将来的に抜歯となることもあります。過去にかぶせ物の治療が一貫性を持って行われていない場合にもよく見られます。
咬合面が上手くかみ合っていない場合の出歯
咬合面がうまくかみ合っていない場合、出歯にも影響が出ます。たとえば、健康保険で作られた歯のように大量生産的に作られた場合、上下の歯の咬合面がしっかり接触していないことがあります。
治療当時に違和感がなくても、時間が経ってから問題が現れることもあります。そのため、出歯を含めた噛み合わせの調和が重要です。
時間がたってから分かる出歯のケース
そうすると、その後何年も時間がたってから、このような困った現象が出てきてしまいます。時間が経ってから、前歯がひらいてくるといった現象として現れるため、患者さんご自身もその時の噛み合わせが原因だったとは思わないことが多いです。
その方に合った咬合(噛み合わせ)を調和の取れた状態でセットするには、いくつかの工程が必要です。
- 歯の形態に技工士が時間をかけて注意深く作り上げる
- セット時に、医療機関側で患者さんの口腔内において、時間をかけて注意深く調整する
- さらにその後、少し使っていただいてからもう一度確認の調整を行う
これらをしてはじめて完成されるものです。しかし、ここまでの作業は健康保険では難しいのが今の精度の限界です。
自費で治療する場合の流れ
- まず現状の顎位(噛み合わせ)の検査(健康保険にはかみ合わせを治すという点数項目がありませんので自費治療)から始まります。
- 歯の位置が悪い場合には、歯周治療後に矯正治療を行い、歯を所定の位置に戻します。
- その後、既存の不備な形態のかぶせ物をすべて撤去し、仮の歯をセットして顎位を正常な状態にまで調整します。
- 歯並びと噛み合わせが安定したところで、その人それぞれの顎の動きに合わせて調和できる咬合面形態が形作られている歯に仮の歯を置き換えていきます。
治療以外にも大切なこと
夜中の歯ぎしりがひどい場合には、ストレスをなるべく体にためこまないようにしましょう。寝る前のストレッチや日ごろの運動も効果的です。また、オステオパシーや整体(カイロプラクティス)で体の緊張や歪みを整えることも大切です。
とはいえ、現代社会でストレスを完全になくすことは難しいです。だからこそ、過酷な状況にも耐えられる口腔内の状態を作ることが重要です。そのためにも、出歯を含めた骨格や顎の動きに調和した噛み合わせを持つことが大切です。
また、当院では歯科情報を様々に発信していますのでぜひご覧下さい。

歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。