
虫歯でない歯がなぜ痛むのか
私たちは普段は気にせずに自分の歯を使っています。しかし、噛んだり歯磨きの時にしみたり、違和感や痛みがあった時、みなさんは「虫歯かな?」と心配になって鏡でのぞいたりしますよね。
「今は痛くないんですけど、お電話した時には歯が痛かったので診てください」
そういった理由で歯科医院へお越しになる方、結構多いんです。
実際にお口の中を調べてみて、歯と歯の間に隠れた虫歯がみつかれば、それが原因だったとわかり納得されるでしょう。
ところが、レントゲン上何の問題もなく、虫歯でもないとわかれば、「先ほどの痛みや違和感はどうして起きたのだろう?」と思いませんか?
それはそのままほっといて治るのか、他に何かした方がいいのかと悩みますよね。本当の原因がわからないと、不安になるものです。
虫歯でなくても歯の痛みや違和感は起こる
例えば皆さんは今までに頭痛になったことがありますか?その頭痛が明らかに二日酔いのせいだとわかっていれば、自分の飲みすぎのせいだから仕方ないとほっておこうと思うでしょう。
ところが群発性頭痛のように、わけもわからず突然激しく痛みだす場合は、ほっておけそうもありません。理由がわからなければ、治るかどうかも不安です。
歯の場合も全く同じです。たとえ虫歯でなくても、歯の痛みや違和感は様々な理由で起こります。
そして虫歯でないのに歯の痛みや違和感となる原因は、4つあります。
- 知覚過敏
- 歯根破折
- 限局性の歯周病(外傷性咬合による辺縁性歯周炎)
- 歯の神経の炎症(根尖性歯周炎・歯髄炎)
今回は、その中でも特に多い「知覚過敏」に関して深堀りします。
知覚過敏とはどんな症状でなぜ起きるのか
知覚過敏症の自覚症状はさまざま
歯ブラシの時にしみる、冷たい水でしみる、物を噛んだ時にしみるなどで気づく方もいます。歯の見た目は何ともなさそうですが、ひどくなると歯茎のキワがクサビ状に欠けることもあります。
専門的には非う蝕性歯頚部疾患NCCL(Non carious cervical lesion)と呼ばれています。
知覚過敏の原因は複合的
以前は強い歯磨きや乱暴な横磨きで歯と歯茎がすり減るのが原因と言われていました。もちろんそれが原因の場合もありますが、現在ではそれだけではないことがわかっています。
多因子説が支持されています
今支持されているのは、歯の表面が溶ける酸蝕症や摩耗、そこに加わる力が原因でエナメル質にマイクロクラック(小さなヒビ)ができ、歯のきわの結晶体がはがれて起きる現象が合わさった結果という多因子説です。
エナメル質と象牙質の関係
エナメル象牙境という境目の部分から噛む力の影響でエナメル質の結晶部分がやられてくることもあります。
知覚過敏は進行するとクサビ型に削れたように歯の際がかけることもあります。
つまり知覚過敏の原因は、複合的な歯に加わる見えない力が重なってできたものです。
知覚過敏が起きやすい人の特徴
具体的には、次の7つのどれか一つ以上ある人は要注意です。
- 口腔ケアがうまくできていない
- 歯磨きが横磨きで強すぎる
- 無意識に舌を強く歯に押しつける
- 夜間の歯ぎしりがある
- 噛む力が強い
- 歯並びがよくない
- かみ合わせの高さが低い
いかがでしょうか?ご自分に当てはまる項目がありましたか?
知覚過敏の対処と実例
【実例1】複数の歯科医院を受診したAさん
Aさんは歯がしみるということで1軒目の歯科医院に行きました。レントゲンなどで調べても虫歯はなく、「特に治療の必要はありません」と言われました。
しかし症状が気になるので2軒目の歯科医院へ。そこでは「知覚過敏が起きているので、歯の表面に知覚過敏処置をしましょう」と言われ、薬液や樹脂を塗ってもらいました。
一時的に治ったものの、またしみる症状が出てきてしまい、3軒目で当院に来られました。
当院での対応
7つの原因を調べたところ、Aさんは歯の磨き方、夜の歯ぎしり、歯並びの3つが原因でした。歯の清掃指導と知覚過敏処置、さらにスプリント(マウスピース)を作り、夜だけ装着してもらいました。
これで知覚過敏が終息しました。
【実例2】ストレスが原因の一時的な知覚過敏Bさん
Bさんは「最近歯がしみてしょうがない」と来院。歯磨きやかみ合わせに問題はなく、舌や頬に歯の圧痕がありました。日中から歯を食いしばっていると推察できました。
ストレスが大きな原因で、口腔内のリラックス体操や意識付けで半年後には症状がなくなりました。
【実例3】かみ合わせが原因の知覚過敏Cさん
Cさんは口腔ケアも良好でしたが、しみる歯が多く、治療のたびに神経を取られ、かぶせ物が多い状態でした。調べると、かみ合わせがクラスⅢ(反対咬合)で、歯への負担が大きいことが判明しました。
矯正治療でかみ合わせを改善し、歯への負担を減らすことで、違和感やしみる症状がなくなりました。
知覚過敏の4つの対処方法
- 歯の清掃をよくして、歯の表面に薬液や樹脂を塗る
- 夜間スプリントで歯にかかる力を分散する
- ストレスをため込まないように運動や体操をする
- 矯正治療でかみ合わせを根本的に改善する
清潔な口腔内を保ち、日常のストレスを減らし、よい噛み合わせを保つことが大切です。
意外な原因で起こる歯科症状の残り3つも順次お伝えしていきます。最後までご覧いただきありがとうございました。
また、当院では歯科情報を様々に発信していますのでぜひご覧下さい。

歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。