インプラントは費用も高いけれど、その分長持ちするものだと思いがちです。確かに、他の選択肢としてある、ブリッジや義歯(入れ歯)より後にでてきたも。なので、期待してしまうのも当然です。

ただし、長期的に良い状態で維持できるかどうかは人それぞれです。

当院でも開業以来多数の種類のインプラントを行ってきましたが、25年も経過し経験的データから考えても、うまくいくケースと予後が安定しないケースがあるのは揺るぎがたい事実です。

インプラントの予後が安定しない10コの要因

オペの術式の方法が未熟である…などといった術者側の要因はクリアーするのが当たり前なのでそういったことは排除して列挙してみました。

  1. インプラント埋入場所の骨が少ないか骨がほとんどない場合。
  2. 術前の口腔内環境の状態があまりよくなく、歯周病の歯が他に多く認められる場合
  3. 術後の感染症対策、口腔ケア対策が十分でない場合
  4. 内科などで代謝性の疾患などの持病を抱えている場合
  5. かなりヘビーなブラキサー(夜間も含めて歯ぎしりの強い人)
  6. 喫煙者
  7. 負担過重な上部構造となっている場合
  8. かみこみが深すぎるかみ合わせ
  9. 上部構造のかみ合わせの高さが十分に取れない場合
  10. 左右のかみ合わせのバランスが不調和な場合

これに対してきちんと対策を考えた上でインプラントを行い、メンテナンスしていかなければ、せっかくの歯が無駄になってしまいます。

対策とは?

1から6までは基本的にオペ前からの対策とオペ後の継続的な対策が必要です。ご自身でのケアももちろん重要です。

7以降に関しましては、実はすべて「かみ合わせ」に起因している問題です。

噛み合わせの問題が解決していないと、悪い結果になる

インプラントにする結果になったそもそもの原因が、仮に噛み合わせの不調和と考えられるのであれば、インプラントをする前の段階で、まず矯正治療や他の部分の補綴処置などで噛み合わせの不調和を取り除くのが真っ当です。

でないと、インプラントを埋入してもオーバーロード(負担過重)により、長期的にはやがてロスト(インプラント喪失)してしまう結果となるからです。

理想的には、歯周病や、合っていないかぶせ物が別の場所に入っていたり等々、そもそもの「歯を失う原因」を治してからインプラントを行うべきです。

とは言え、満を持しての状態まで待つのは難しい部分もあります

しかし、そうでなくてはインプラントをしないということになると、それはそれで大変です。矯正治療や補綴物の入れ替えなどを行わなければならず時間とコストが大きく増えるからです。

また歯周病であるなら、診療所への定期的な通院が不可欠となりいずれにせよ費用と時間がある程度かかります。

現実的にはリスク因子をある程度許容しつつ、行うことに

現実的にそこまで費用をかけられないとか、時間がないといった方が多い。なので、許される範囲内である程度のリスク因子を抱えながらの中でのインプラント埋入ということになるのがほとんどのようです。

我々臨床家が一番悩むところはそういった線引きをどこに設定するかということでしょう。

大学病院でも確実なリスク因子となる例えば喫煙歴などがある人のオペは基本的にインタビューの段階で除外されます。

よく週刊誌沙汰になる一般開業医でのインプラントの失敗例などでは、おそらくこうしたところでの線引きが甘かったことによるものが起因しているからであろうと推察されます。

インプラントを行う際にご自身の「リスク因子」を把握しておきましょう

です。なので、もしインプラントをお受けになる場合にはその担当の先生に、自分に今あるリスク因子が何なのかをよく教えてもらって、理解したうえで治療を進めていかれるのが一番だと考えます。

インプラントは素晴らしい治療選択の一つですが、その前にご自身がその歯を失うことになった本当の原因が何だったのかを今一度ご担当の先生とよく話し合われて、納得したうえで治療を進められることを強くお勧めいたします。

インプラント治療って何をやるの?と言う方はよろしければ当院のページをご覧下さい。

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